今回の記事では、以下の三つのレポートを参考にしつつ、インドネシアの中小企業のマーケットの概観とDX支援を行うスタートアップについてまとめていきたいと思います。
- SME Empowerment Report 2020 by DS Research
- SaaS Wave in Indonesia by Ravenry and Innovation Factory
- Micro and Small Businesses in Indonesia’s Digital Economy by Asia Pacific Foundation of Canada
インドネシアの中小企業の市場概観
- まずはじめに、インドネシアの中小企業の市場概観についてみていく。
- インドネシア国内には約6555万の企業が存在する。
- そのうちに、中小及び零細企業が占める割合は、全体の約99.9%を占める。
- その中で、Micro Businessと呼ばれる零細企業は、98.66%
- Small Businessと呼ばれる小規模企業は、1.24%
- Medium Businessと呼ばれる中規模企業は、0.1%である。
- これらの中小及び零細企業を総称して、MSMEs (Micro, Small, Medium Enterprises)と呼ぶ。
- 実は、インドネシアの大手企業は全体の1%も満たないのである。
インドネシアの企業規模ごとの企業数の分布

- インドネシアのGDPのうち中小及び零細企業は全体の58%を構成する。
- そして雇用に関してはインドネシア全体の雇用の95%以上と大部分を担っている。
インドネシアのGDPの中で各企業が占める割合

- 産業ごとの中小及び零細企業の分布に目をやると、およそ50%が農業や漁業などの第一次産業、30%が、小売、飲食、宿泊などのサービスセクターである。

- まとめるとインドネシアの企業のうち99%以上が中小および零細企業であり、GDPに占める割合は58%、そしてその企業のうちの約半分が第一次産業、約30%がサービス業である。
中小企業によるデジタル活用の波
- そんな経済の約60%を占めるインドネシアの中小及び零細企業にもデジタル活用の波が来ている。
- それには主に以下の3つの背景がある。
- 1つ目に、ここ何年かでインターネットとモバイル端末などの普及が急激に進んだからである。
- 2014年に34.9%しかなかったインターネット普及率は、2018年には64.8%となり2倍ほど膨れ上がった。
- デロイトの調査によると、2018年にはインドネシアのMSMEsの60%がインターネットにアクセスできると言われている。
- 2つ目に、SaaSスタートアップなどが台頭し、企業のデジタル活用のオプションが増えたからである。
- 一方で、SaaSなどの新しいコンセプトに対して認知や理解が低いとの課題もある。
- それらの問題を解決するためにSaaSスタートアップは、様々な取り組みをしている。
- 例えば、大手通信会社と販売提携を結び、幅広く認知されている販売チャネルを通じてサービスの提供。
- 他には、MSMEs向けのワークショップの開催による理解の促進などがある。
- 3つ目に、インドネシア政府による中小企業のデジタル活用施策が挙げられる。
- インドネシア政府の州共同組合・中小企業省は、2017年より会計業務や財務報告をアプリまたはウェブを通じて行えるLAMIKROというサービスを提供している。
- インドネシア中央銀行は、2019年よりe-wallet決済におけるQRコードの標準規格QRISを作成し、MSMEsの店舗やオンラインでの決済をより簡潔により便利にした。
- 1つ目に、ここ何年かでインターネットとモバイル端末などの普及が急激に進んだからである。
中小企業のDX支援を行うスタートアップ
- 中小企業のDX支援を行っているスタートアップは、主に3つの分野で分けられる。
- それは、ファイナンス、業務オペレーション、オンライン販売支援の3つである。
各分野の中小企業支援スタートアップのカオスマップ

ファイナンス支援
- インドネシアの中小企業にとって、資金調達へのアクセスが欠けていることは大きな課題である。
- McKinseyのレポートによれば、中小企業の50%以上が銀行以外のところから資金調達を行わざるを得ないとなっている。
- これは多くの中小企業がいまだに紙ベースの財務管理を行っていることで、帳簿や必要書類に不備があり、銀行が適切に審査や信用調査を行えないからである。
- そんな課題を抱えている中小企業に対して、スタートアップは金融ソリューションを提供している。
- P2P融資、株式型クラウドファンディング、クレジットスコアリング、会計アプリサービスなどがそうである。
- P2P融資や株式型クラウドファンディングなどのプラットフォームは、代替の資本調達手段を提供する。
- クレジットスコアリングや会計アプリサービスは、銀行での融資を受けやすくなるようにサポートする。
- 会計アプリを通じて得られる企業の財務データは、銀行が与信調査にかけるコストの削減に役立つ。
業務オペレーション改善
- インドネシアの中小企業は、人件費が安いこともあって、多くの業務を人的労働に頼っている。
- しかし、人的なオペレーションは、時として非効率であり、ヒューマンエラーによるミスも起きやすい。
- 特に、テレワークが推奨されるコロナ禍では、書類など紙ベースでの管理も難しくなってきている。
- 業務オペレーション改善サービスは、業務を自動化することでヒューマンエラーを削減し、デジタル化することで紙の紛失などのリスクを減らすことができる。
- そんな中小企業の業務オペレーションを効率化するサービスは主に3つの分野に分かれる。
- それはPOSと決済ゲートウェイ、人事労務管理システム、物流支援サービスの3つである。
- POSと決済ゲートウェイ
- POSと決済ゲートウェイの2つは販売管理の観点でセットで語られることが多い。
- 中小企業はPOSシステムを使うことで、これまで手動で行なってきた商品の在庫管理を自動化することができる。
- 決済ゲートウェイを導入すると顧客のニーズにあった複数の決済手段を受け入れることができるようになる。
- 人事労務管理システム
- 人事労務管理システムは、勤怠管理、給与や所得税の計算、社会保険の支払いなどの人事に関連する業務を効率化してくれる。
- 物流支援サービス
- 物流支援はさらにその中でも、仕入、配送、倉庫の3つに分かれる。
- 仕入支援サービスのスタートアップは、小規模の飲食店や小売店などが複数のサプライヤーから最適な商品を注文できるマーケットプレイスのアプリを提供している。
- 配送や倉庫の支援はセットになることが多いが、複数の配送会社や倉庫の中から、企業にとって最適な選択を行なってくれたりする。
- POSと決済ゲートウェイ
オンライン販売支援
- オンライン販売を支援するサービスは、主に中小企業に新しい販売チャネルを提供して、売上の向上に貢献する。
- これは主に、EコマースプラットフォームとEコマース支援ツールの2つがある。
- Eコマースプラットフォームは、いわゆるオンラインの売買マーケットプレイスである。
- すでに大量の利用者がいるプラットフォーム上で、企業は簡単にオンラインストアを開設することができる。
- Eコマース支援ツールは、Eコマースプラットフォームと補完関係にある。
- 例えば、複数のEコマースのマーケットプレイスに出店した際の、バックエンドでの注文管理や在庫管理などを一元化するサービスなどがあげられる。
- その他には、自社のEコマースの立ち上げをテンプレートを使って簡単にできるようにするサービスなどもある。
以上、インドネシアの中小企業の市場概観とDXを支援するサービスの紹介でした。
所感
- インドネシアのDX支援サービスの市場はここ数年で盛り上がってきたばかりなので、日本にいるプレイヤーに比べたら種類も数も全然少ない。
- SaaSスタートアップのほとんどがシードかシリーズAのラウンドで、シリーズBの資金調達をできているところは少ない。
- しかし、未開拓な点が多いからこそ、その分、成長の伸び代も大きいと言える。
- ボストンコンサルティングの調査によれば、インドネシアのSaaS市場の市場規模は、2018年に1億ドルだが、2023年には4億ドルまで成長すると試算されている。
- インドネシアのDX支援は始まったばかりなので、今後の成長に期待を寄せたいと思う。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
もしこちらの記事が参考になりましたら、SNSなどでシェアしていただけますと幸いです!
Investnesiaでは、市場調査などのリサーチの支援も行っておりますので、是非気軽にご連絡ください。
Investnesiaについて初めてという方はこちらの記事をご覧ください。

Investnesia紹介記事当サイトに訪問いただきありがとうございます。こちらの記事では、Investnesiaについてご紹介します。
Investnes...